害獣駆除でお金がもらえるの?と疑問に思っている方に、全国の自治体が実施している報奨金制度の実態をご紹介します。近年、イノシシやシカ、クマなどの野生動物による農作物被害や人的被害が増加しており、各自治体では害獣駆除に対する報奨金を設定しています。本記事では、報奨金の高額ランキングから制度の仕組み、注意点まで詳しく解説します。
害獣駆除報奨金とは何か
害獣駆除報奨金とは、農作物や人々の生活に被害を与える有害鳥獣を駆除した際に、自治体から支給される金銭のことです。この制度は、深刻化する野生動物による被害を減らすために設けられています。
報奨金制度の目的と対象
報奨金制度は、野生動物による農作物被害や人的被害を防ぐために設けられた制度です。国からの交付金として、イノシシやニホンジカ、ニホンザルの成獣に対しては1頭につき8,000円、幼獣には1,000円が支給されます。この国からの交付金に加えて、都道府県と市町村からの報奨金が上乗せされる仕組みとなっています。
対象となる有害鳥獣は、人や家屋に被害をおよぼすもの、農作物や水産物といった事業に関連するもの、樹林などに被害を与える野生化した鳥獣です。具体的には、イノシシ、シカ、クマ、サル、ハクビシン、アライグマ、カラスなどが含まれます。
報奨金を受け取れる条件
報奨金を受け取るには、狩猟免許の取得が必須です。狩猟免許には、網猟免許、わな猟免許、第一種銃猟免許、第二種銃猟免許の4種類があります。また、自治体からの捕獲許可を取得し、猟友会などの狩猟団体に所属することが一般的に求められます。
報奨金の申請時には、捕獲した害獣の耳や尻尾、捕獲時の写真、鳥獣捕獲活動書などの提出が必要です。自治体によって必要書類は異なるため、事前に確認することが重要です。
害獣駆除報奨金 高額な事例の紹介
全国の自治体が設定している報奨金の中から、高額な事例をご紹介します。自治体によって金額に大きな差があることがわかります。近年、害獣被害の増加から、報奨金制度は各自治体で改定が続いている場合があり、調査時点から内容が変わっている場合もあることはご了承ください。
ニホンカモシカ(静岡県静岡市)10万円
ニホンカモシカは国の特別天然記念物に指定されている希少な動物ですが、農作物を食い荒らす被害が大きいため、一部地域では個体数調整の目的で捕獲が認められています。静岡市では1頭につき10万円という高額な報奨金を設定しており、これは全国でもトップクラスの金額です。
警戒心が強く発見が困難なことも、高額報奨金の理由の一つとされています。
クマ(北海道紋別市)6万円
クマによる被害は人的被害を含め深刻さを増しており、全国的に報奨金の支給を新たに設けたり、金額を増やす自治体が増えています。北海道紋別市では1頭につき6万円の報奨金が設定されています。
クマの駆除は命がけの作業となるため、任務の重さに比べて報酬が少なすぎるという指摘もあり、自治体によって1万円から5万円まで幅があります。福島県矢吹町では1頭につき2万円が設定されています。
シカ(岡山県岡山市)2万7千円
シカは農作物への被害が特に大きく、全国各地で被害が確認されています。岡山県岡山市では、食肉処理等のための施設において搬入確認した場合2万1千円の有害鳥獣捕獲奨励金と6千円の捕獲促進奨励金が設定されています。
シカの被害額は年間で53億円にも上るとされており、各自治体が対策に力を入れています。
イノシシ(福島県矢吹町)2万円
イノシシによる被害も深刻で、農作物だけでなく人的被害も報告されています。福島県矢吹町では1頭につき2万円、静岡県静岡市では1頭につき1万5千円が設定されています。
広島県東広島市では1頭につき7千円となっており、自治体によって金額に差があります。
アライグマ(鳥取県)1万円
アライグマは果樹園の果物や養鶏場、養魚場に被害を与えるほか、家屋への侵入や生態系への被害など多岐にわたる害を及ぼします。鳥取県では他県よりも高い1頭1万円の報奨金を設定しています。
外来種であるアライグマは、人間の都合で持ち込まれた動物ですが、現在では駆除の対象となっています。
地域別の害獣駆除報奨金制度
全国各地の自治体では、地域の実情に応じて異なる報奨金制度を設けています。ここでは主要地域の制度をご紹介します。
北海道・東北地方の報奨金制度
北海道では、特にクマによる被害が深刻化しており、紋別市では1頭につき5万円という高額な報奨金が設定されています。東北地方では、福島県矢吹町がクマとイノシシの両方に対して1頭2万円の報奨金を設定しています。
これらの地域では、農作物被害だけでなく、住宅地への出没による人的被害のリスクも高まっているため、積極的な駆除が求められています。
関東地方の報奨金制度
関東地方では、各自治体が地域の実情に応じた報奨金制度を設けています。ただし、東京都心部など都市部では報奨金制度を設けていない自治体も多く見られます。
千葉県や神奈川県の一部自治体では、イノシシやシカに対する報奨金制度を実施しており、金額は数千円から1万円程度が一般的です。
中部・東海地方の報奨金制度
静岡県は全国でも特に高額な報奨金を設定している自治体が多い地域です。静岡市ではニホンカモシカに10万円、島田市では5万円と、他地域と比較して突出した金額となっています。
また、イノシシに対しても静岡市では1万5千円の報奨金が設定されており、野生動物による被害が深刻な地域であることがわかります。
関西・中国地方の報奨金制度
岡山県岡山市では、有害鳥獣捕獲奨励金と捕獲促進奨励金を合わせて2万7千円という高額な報奨金を設定しています。広島県東広島市ではイノシシ1頭につき7千円が支給されます。
大阪府など都市部では報奨金制度を設けていない自治体が多いものの、山間部を抱える自治体では積極的な制度運用が行われています。
害獣駆除報奨金を受け取るまでの流れ
報奨金を受け取るには、複数の手続きが必要です。ここでは一般的な流れをご紹介します。ただし、自治体によって詳細は異なるため、必ず事前に確認してください。
狩猟免許の取得方法
狩猟免許を取得するには、まず受験資格をクリアする必要があります。年齢は18歳以上(網猟免許とわな猟免許)または20歳以上(銃猟免許)で、一定の病歴がないことなどの条件があります。
試験は適性試験、知識試験、技能試験で構成されており、合格率は80~90%程度です。試験は免許の種類ごとに年間複数回実施されています。狩猟免許の有効期間は3年で、3年ごとに講習と適性検査を受けて更新する必要があります。
捕獲許可申請の手順
狩猟免許を取得した後、自治体に捕獲許可申請書を提出します。申請の際には、被害状況を証明する写真や目撃情報、事業計画書などの書類が必要です。
許可が下りた後、実際に害獣を捕獲します。鳥獣保護管理法により、許可なく野生動物を捕獲することは法律違反となり、罰則の対象となります。
報奨金申請に必要な書類
報奨金の申請には、以下のような書類が一般的に必要です。
捕獲報告書、捕獲した害獣の写真、捕獲した害獣の耳や尻尾(証拠として)、鳥獣捕獲活動書、購入費の領収書の写し(防護柵等を設置した場合)などが求められます。
提出期限は捕獲許可期間の満了後30日以内、または捕獲した年度の3月31日のいずれか早い日までとなっている自治体が多いです。
害獣駆除報奨金の税金と注意点
報奨金を受け取った場合、税務上の取り扱いについて理解しておく必要があります。知らずに申告漏れをすると、ペナルティが課される可能性があります。
報奨金は課税対象となる
害獣駆除の報奨金は、所得税の課税対象となります。事業所得または雑所得として扱われるため、確定申告が必要です。
狩猟を本業とする人が受け取った報奨金は事業所得となりますが、サラリーマンが副業として報奨金を得た場合などは雑所得となる可能性が高くなります。雑所得の場合、青色申告ができない、損益通算が認められないなどのデメリットがあります。
経費として計上できる項目
報奨金を得るために必要となった出費は、経費として計上できます。狩猟用品(ベスト、作業着、長靴、手袋、わななど)の購入費、備品工具(ナイフ、ロープ、スコップなど)の購入費、銃(銃本体、弾丸、火薬、雷管など)の購入費、猟友会の会費、ガソリン代や交通費などが該当します。
猟銃など10万円以上の機材は減価償却資産となり、購入費用を使用可能期間にわたり分割して費用計上できます。
申告漏れに注意
過去には、報奨金が課税対象と知らなかったという理由で申告漏れが発覚したケースが多数報告されています。大阪国税局の調査では、2020年12月までの5年間で32人のハンターが総額1億7000万円もの申告漏れがあったことが判明しました。
申告漏れが見つかれば、悪意がなかったとしても加算税や延滞税などのペナルティが課せられます。国税当局は厳格な姿勢で調査を進める可能性があるため、適切な申告が重要です。
個人で害獣駆除をする際のリスク
報奨金制度があるからといって、安易に個人で害獣駆除に取り組むことは推奨できません。多くのリスクが伴うためです。
法律違反のリスク
鳥獣保護管理法により、ほとんどの野生動物は保護の対象となっています。たとえ害獣であっても、許可なく捕獲や殺処分を行うことは法律違反となり、罰則の対象となります。
許可を受けた狩猟免許所持者でなければ駆除はできず、個人が自宅に出た害獣を勝手に駆除しても報奨金は支給されません。
危険性と感染症のリスク
害獣駆除は危険を伴う作業です。不慣れな人が対応すると、害獣に引っかかれたり噛み付かれたりして怪我をする恐れがあります。また、害獣の糞尿には病原菌や寄生虫が潜んでいることが多く、感染症にかかるリスクも高いです。
クマなどの大型動物の駆除は命がけの作業となり、専門的な知識と経験が不可欠です。屋根裏に棲み着いた害獣を駆除する場合は高所での作業となり、転落のリスクもあります。
駆除後の処理の負担
害獣を捕獲した後も、適切に処理する必要があります。害獣の糞尿の清掃や消毒は、感染対策の正しい知識がないと危険です。自治体によっては捕獲後の回収を行っていない場合もあり、個人で処理しなければなりません。
死骸の焼却や埋葬も自分で行う必要があり、精神的・肉体的な負担が大きくなります。
害獣駆除は専門業者への依頼がおすすめ
個人で害獣駆除を行うには多くのハードルがあります。確実かつ安全に害獣問題を解決するには、専門業者への依頼が最適です。
専門業者に依頼するメリット
専門業者は許可証を取得しており、駆除専用の道具や薬剤、豊富な知識と経験で駆除や侵入対策を行います。個人で害獣を駆除しようとすると、免許の取得や猟友会への入会、役所への届け出などが必要で、かなり時間がかかります。
その間にも害獣による被害は進行し続けます。専門業者であれば、依頼が来ればすぐに対応できるため、被害拡大を防止できます。また、ケガや感染症のリスクを負うこともありません。
業者選びのポイント
害獣駆除業者を選ぶ際は、実績が豊富であることを確認しましょう。施工事例が多い業者ほど、スタッフの知識やスキルが高く、信頼性があります。
事前調査や見積もりが無料の業者を選ぶことも重要です。有料の場合、詐欺のリスクも考えられます。見積もりは内訳がわかりやすく表記されているかもチェックしてください。
また、利用者の口コミや評判も参考になります。特にGoogleに寄せられた口コミは、実際に利用した人の生の声が反映されているため有用です。即日対応可能な業者は、顧客を大切にしている傾向があり、信頼できる指標となります。
費用対効果を考える
専門業者への依頼には費用がかかりますが、免許取得や猟友会への入会費用、駆除に必要な道具の購入費用などを考えると、結果的にコストパフォーマンスが高い場合も多いです。
猟友会の会費だけでも年間1万円から1万5千円程度かかり、狩猟用品や備品の購入費用も相当な金額になります。また、市役所への手続きや長い待ち時間といった時間的コストも削減できます。
最も重要なのは、専門業者に任せることで確実に害獣を駆除し、再発を防ぐための侵入対策まで行えることです。
まとめ
害獣駆除報奨金は、自治体によって金額や対象動物が大きく異なります。最も高額なのは静岡市のニホンカモシカで10万円、続いて北海道紋別市のクマが5万円となっています。
報奨金を受け取るには狩猟免許の取得、捕獲許可の申請、適切な書類の提出など、多くの手続きが必要です。また、報奨金は課税対象となるため、確定申告も忘れずに行わなければなりません。
個人で害獣駆除を行うには法律違反や怪我、感染症などのリスクが伴います。確実かつ安全に害獣問題を解決したい方は、専門業者への依頼を検討することをおすすめします。専門業者であれば、駆除から侵入対策まで一貫して対応してもらえ、安心して任せることができます。


